試験対策についての「勉強会ぽらりす」の見解
試験対策を行うことは有害無益なのか?
最近の技能士1級・2級試験の過去問題とともに「試験官から観た受検者の傾向」の一文が掲載されるようになったことはご存知のことと思います。直近の第28回2級技能士試験の過去問には第27回試験時の一文とは別に、より具体的な内容で記述されていました。
当「勉強会ぽらりす」も試験対策を行っている以上、この一文は見過ごせませんし、きちんとした見解をお伝えしておきたいと考えます。
まず、このような文が掲載されるようになった背景については、大きく二つの理由があると見ています。
一つは試験が回を重ねるにしたがって、試験そのものが詳細に研究されるようになり、合格するためのノウハウがたくさん出回るようになってきたことです。私が受検した当時は、試験対策を目的とした勉強会のようなものはほとんど存在せず、自然発生的に集まった有志が手探りで試験対策やロープレ練習を行っていました。しかし今はどうでしょうか。それこそ無数の試験対策勉強会が誕生し、独学では対処が難しいこの試験合格への通り道となっています。
二つ目は、試験対策のノウハウが多く出回った結果、マニュアル通りに進めさえすればよいと考える人が増えたことです。眼の前の相談者を見ず、自分が用意してきたシナリオ通りに進めようとしたり、うわべだけ上手に無難に面談を進め、出来た気になっている人が増えたことです。上記の一文は、この傾向に対する試験実施団体の懸念が形になって現れたといえるでしょう。実は2~3年前からこうした懸念について試験実施団体内部でもいろいろと話しが出ていたとも言われています。
どのような試験も回を重ねることにより合格するためのノウハウが登場し世の中に出回ります。そして試験団体もそれを見て試験の内容を改良します。キャリア関係の試験も回を重ねて進化し、以前よりも難易度が上がっています。
こうした傾向に対して、キャリア関係の資格の実技試験での試験対策を行うことそのものに疑問を呈し、ロープレ練習などはむしろ合格にとって有害無益であるという考え方をする人もいます。しかし、私自身は、そのようなことも踏まえた上でやはり試験対策は必要であると考えています。現実として、試験対策を全く行わずに「とにかく眼の前の相談者に全力で集中しさえすればよい」という姿勢で相談者の問題を把握し共有し、相談者の行動変容につなげることができるでしょうか。中にはそれが可能な人もいるでしょうが、多くの人にとっては難しいと私は思います。その理由は、誰もが日常的に面談機会を持っているわけではないこと、また日頃面談業務を行っている人であっても、残念ながらそうした面談と試験のロープレは異なっている部分が多いからです。
テニスでも野球でも剣道でも基本的なフォームを身につけず、感性だけで試合に臨んだとしたらどうでしょうか。結果は成り行き任せになってしまいます。スポーツや武道だけでなく、楽器でも基本練習があってこその応用という点は同じです。
私はこれといった試験対策が無かった頃の受験生ですが、今考えると実に見当違いの無駄なことをたくさん行っていました。
当勉強会は、キャリア関係の資格取得を目指す方に少しでも「道しるべ」になれることを願って「ぽらりす(北極星)」と命名しました。その名に恥じぬよう、参加される方の力になることを今後も目指していきたいと思います。
一方で、インスタントな試験対策にとどまらず、相談者と相談者の状況に応じた柔軟な 「真の面談力」とは何かを追求し、これまで以上にお伝えしていく所存です。
一級キャリアコンサルティング技能士
渡辺 ユタカ
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